事故情報

3.五酸化バナジウムによる中毒事例

愛知県内の事業場で、発電用ボイラーの集塵装置の点検工事に携わった労働者1名が、集塵装置内に堆積した燃焼灰中の五酸化バナジウム(※注)を吸入することにより、業務上疾病に罹患する事例が発生したのでお知らせします。発生状況および同種災害防止対策は次のとおり。

1.災害発生状況

被災者は発電設備の点検工事において、重油を燃料とするボイラーの集塵装置のホッパーに貯まった燃焼灰をバキュームカーで回収・廃棄した後、バキュームカーを自社駐車場に移動させ、バキュームカーのタンクに入り、タンク内部に付着した燃焼灰をスコップで掻き落とし、水洗いする作業を行った。このとき、被災者は燃焼灰中の五酸化バナジウムを吸引し、帰宅途中、急性気管支炎、呼吸不全等の五酸化バナジウムの中毒の症状を発症し診療機関を受診した。
ボイラーの集塵装置のホッパーに貯まった燃焼灰を分析したところ、特定化学物質第2類物質である五酸化バナジウムを1.44%含有していることが判明した。原油中には産地により差はあるが、バナジウムが数ppmから100ppm程度含まれており、燃焼により五酸化バナジウム(V2O5)が生成される。

2.被災者の疾病名等
  1. 疾病名
    五酸化バナジウム中毒による休業
  2. 主な症状等
    急性気管支炎、同咽頭炎、同呼吸不全、頭部湿疹
3.災害発生原因
  1. 特定化学物質第2類物質である五酸化バナジウムを取扱う際、特定化学物質作業主任者を選任しなかったこと。
  2. 五酸化バナジウムを取扱う際、労働者に呼吸用保護具を着用させなかった可能性が高いこと。
  3. 下請け事業場に五酸化バナジウムの有害性に対する認識がなく、五酸化バナジウムによる中毒を防止するため、必要な作業管理がなされなかったこと。
  4. 燃焼灰中の五酸化バナジウムの有害性についての安全衛生教育が不十分で、労働者に有害性の認識が不足していたこと。
  5. 下請け事業場がタンクの清掃を工事現場外で処理したため、元請事業場が有害業務を十分管理できない結果となったこと。
  6. 五酸化バナジウムを取扱う作業場での喫煙・飲食の禁止を指示しなかったため、喫煙等の際、経口摂取した可能性があること。
4.同種災害防止対策の概要
  1. 特定化学物質作業主任者を選任し、保護具の着用状況の監視等の職務を確実に行わせること。
  2. 下請け事業場に五酸化バナジウムの有害性に対して認識させ、関係法令などに基づく必要な作業管理を行わせること。
  3. 関係労働者に燃焼灰中の五酸化バナジウムの有害性についての安全衛生教育を十分に行うこと。
  4. 五酸化バナジウムを含有する燃焼灰の現場外への持ち出しの禁止等、処理方法を明確にすること。
  5. 五酸化バナジウムを取扱う作業場での喫煙・飲食を禁止とし、その旨作業場の見やすい箇所に表示すること。
  6. 必要に応じて、取り扱う燃焼灰中の五酸化バナジウムの含有率を調査すること。
5.五酸化バナジウムの危険有害性情報は別紙(略)のとおりである。(中央労働災害防止協会ホームページより)

(以上、愛知労働局がまとめたもの)

なお、重油だきボイラーについては、ボイラー本体の外面(熱ガス側)、過熱器、節炭器等のボイラー付属設備の外面炉壁、煙道等に堆積または付着した物を取り除くボイラー清掃作業における五酸化バナジウム等有害粉じん、無水硫酸等による障害の発生を予防するために、昭和45年4月3日付け基発第271号「重油だきボイラの清掃作業における五酸化バナジウム等による障害の予防について」が通達されている。

(危険有害性情報―抜粋) 中央労働災害防止協会ホームページhttp://www.jisha.or.jp/

〔※注
性状:
黄色~赤色の固体。酸アルカリに溶解する。
人体への影響:
急性症状としては、粘膜の刺激作用があり、鼻カタル、気管支炎、せき、くしゃみ等の症状がみられる。重症の場合には急性肺炎、喀血、視神経炎の症状がみられる。
慢性症状としては、皮膚の蒼白、手指の震せん、せき、気管支炎胸痛がみられる。
なお、暴露された作業者には舌の緑黄色がみられる。
保護具:
防じんマスク、保護眼鏡、化学防護手袋、保護服等を使用する。

災害事例:

  1. 重油焚きボイラーの燃焼室内掃除作業で、すす中の五酸化バナジウムを吸入し、3名がせき、たん、胸痛を訴えた。保護具は使用していなかった。
  2. ボイラーの燃焼室内部の掃除中、堆積粉じん中の五酸化バナジウムを吸入し9名が気管支炎を起こした。保護具は使用していなかった。
  3. 重油専焼ボイラーの内部のスケール落し作業中の者23名が頭痛、めまいを訴えた。保護具は使用していなかった。
  4. 重油専焼ボイラーの燃焼室内部の清掃作業者7名が、作業中異常がなく夜、目の痛み・のどの痛みを訴え、気管支炎、上気道炎と診断された。
  5. ボイラーの燃焼室内部の清掃中、堆積粉じんを吸入、作業者9名が気管支炎を起こした。


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